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[2631] 氷の将校と魔性の青年の物語 その2
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リンドウノ 2017/2/12 (Sun.) 20:54:35
スケートやってないしそれ以前に最早ユーリ!!!にまったく関係ない妄想つづき。


++++++++++++




投函されることのなかったヴィクトル・ニキフォロフの手紙

(1943 モスクワ)


ユウリ。
このような時局にあって尚、お前の名を呼ぶ事を許してほしい。
お前が故郷に戻り、そこで結婚した事は噂で聞いたよ。
結局、俺たちはお互いの決定的な違いを埋め合わせることは叶わなかった訳だが、高潔なお前は、きっと今後も曇りなく真っ直ぐな人生を送るだろうし、それが相応しい男だと思っている。



ああ、違うな。俺はそんな殊勝な世辞など言いたくはないのだ。

ユウリ。何故お前は、自ら終わりを切り出した。何故俺の最後の、心底からの言葉を無下にして去った。
俺がハルビンで、あの美しく偽り塗れの街でそれでもお前に対してだけは誠実であろうとしたが、お前は違った。
その一点について、俺はお前を憎んですらいる。今となっては何もかも遅すぎるが。

さようならだ、ユウリ。



Re:氷の将校と魔性男。
みゆ 2017/2/12 (Sun.) 21:37:37
「ユーリを観ていない」私が「非常に気になる」素敵な展開。
これって、薄い本を出すべきだと本気で思うですよ。
ドーンといきましょう!
絶対、マニア受けしますってば!

Re:氷の将校と魔性男。
リンドウノ 2017/2/13 (Mon.) 23:57:09
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃいませ。
最早ユーリ!!!とは全く関係ないただの妄想話と化しておりますがご覧頂きありがとうございます!題材が題材だけに薄い本など出した日には各方面からお叱りを受けそうなのでここでこっそり妄想しておくだけにしておきますが。
コメントありがとうございました!

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[2632] レジェンドれんしゅう。
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リンドウノ 2017/2/13 (Mon.) 23:33:57
今さらですが、レジェンド描く時にほぼ本家絵見ずに適当に描いてたのでココに来て資料見つつお絵描き、、が!どこをどうやっても自分絵にしかならない、そして美形って何ですか世界一モテる男ってどういう意味ですか。
レジェンドが長い髪をバサッと切った時はさぞかし女性ファンが悲鳴をあげたんでしょうな、管理人も割と(描きやすいので)長髪好きですが、レジェンドに関しては後ろを短く刈った髪型かっこいいーとか思ってます。
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[2635] 氷の将校と魔性の青年の物語 その3
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リンドウノ 2017/2/14 (Tue.) 23:41:04
故郷、長谷津で結婚した勝生上等兵ですがその後戦局は悪化。彼は身重の妻を残して再び大陸へ、今度は最前線へと送られます。そしてソ連参戦、、終戦。敗走が始まります。





(1946 シベリア)

「氷の将校と畏れを込めて呼ばれるその男を、僕は知っていた。
かつてあの美しい街で花と謳われた男を。
彼は僕を見た。僕は彼を見た。凍てつく湖の底の光のような美しい青、僅かな憐憫すら残さない瞳を。
地獄はその地にあった。」



「彼処で俺が何を行ったかについては、語る価値すらない事だ」





Re:氷の将校と魔性男。
みゆ 2017/2/15 (Wed.) 21:52:14
うわー、まさかのシベリア抑留っすか!
1946年ならそうですよねえ…。
薄い本が出ないだなんて…。出ないだなんて、あんまりですってば…!
いや、ユーリ観てないからデカイ声では叫べないのが辛いっす。
凄く美味しそうな題材なのに…!

Re:氷の将校と魔性男。
リンドウノ 2017/2/16 (Thurs.) 00:21:42
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃいませ。
ハイ、まさかのシベリア抑留編です。帝国陸軍上等兵とソ連軍将校の50年に渡るすったもんだ、、な設定の時点で必然的にこうなりました、各方面にはスミマセンとしか。
流石に薄い本は出ませんがpixivに纏めてアップしようかしらん、とも考えてはいますが、字書きではないのでチャレンジャー過ぎますね。
コメントありがとうございました。

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[2636] 雪の断章。
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リンドウノ 2017/2/16 (Thurs.) 00:14:50
、、という斉藤由貴主演の映画がありましたなあ、観たことないけど。
下のイラストの全体像。思ったよりヴィクトルさんがサディストっぽくはならず、魔性もエロくないです、これでいいのだ。
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[2637] 氷の将校と魔性の青年の物語 その4
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リンドウノ 2017/2/18 (Sat.) 00:22:37
書かれることのなかった勝生上等兵の日記

(1946 シベリア)







銃声が聞こえた。数秒後の木霊と、静寂。



「彼らの処刑は俺が命じた」

こともなげにヴィクトルは言い、椅子から無造作に投げ出した長い足を組み替えた。

硬質かつ壮麗な敵国の軍服を隙なく纏った彼に対して、俘虜であるこの僕の身なりはきっと酷い有様だろうな、ふとそんな取るに足らない感情が浮かび、直ぐに消えた。

僕は彼の、変わらぬ端正な貌を凝視していた。彼が属する冷たく残酷な世界を体現しているかのようなその横顔を。

しかしそれは僕とて同様なのだ。此処に連れて来られるまでに幾度となく経験した地獄、既に僕の足元も泥と血に塗れていた。



ーーシカタノナイコトダ。





「大尉」僕は震え声で言った。唇はあちこちがひび割れ、血の味がした。

「食料を。このままでは僕達の班は一週間ももたない」

「興味ないな」彼は酷薄に言い放った。

「お願いだ」





(・・・あの、お綺麗なロシア野郎に気に入られりゃあ俺たちも少しはいい思いが出来るし、上手く行けば国に帰れるってもんだ)

1時間前、そう囁いてきた叩き上げの上官の下卑た声が言葉が頭をよぎる。唾を飲み込もうとしたが既に口の中には一滴の水分も残ってはいなかった。干上がった自分の口から出て来る言葉は、他人事のように聞こえた。







「何でもします。貴方が僕に望む事を、何でも」









恐ろしい沈黙の後、こちらを一瞥することもなく彼は呟いた。

「ああ、お前は本当に、何処までも傲慢な男だな」

何故かその声は酷くかすれ、傷付き震えているようにも聞こえた。
白くしなやかな肉食獣のごとき身体が椅子から立ち上がり、僕の方に歩む気配がした。


「キスを」ヴィクトルは言った。

「先ずはそこからだ」



足元に広がる闇を眺めつつ、僕は跪いた。
遠くからまた銃声が聞こえ、そして静寂がおりた。






Re:氷の将校と魔性男の物語り。
みゆ 2017/2/18 (Sat.) 21:38:41
おおお、盛り上がって参りました…!
「かつてない境地」に踏み込んでいらっしゃいませんかね、このお話は。
INNOCENTは脇が「ゲイだのバイだの」だらけでしたけど、今回は「直球ド真ん中」では…?
続き、楽しみにしております。…ユーリ観てないけど、充分に面白い…!

Re:氷の将校と魔性男の物語り。
リンドウノ 2017/2/18 (Sat.) 22:20:58
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃませ。
いやもうホント、横道それまくった結果ユーリ全く関係なくなっててスミマセン!としか。

その点ではINNOCENTのスピンオフ?として描き始めたマカロニウェスタンが横道それまくった挙句本道っぽくなったり、後日譚の小説がゲイだのバイだので埋め尽くされた展開に似てますね、、、遠い目。

そんなこんなで、個人的にはガチモードに入った氷の将校と魔性男の話、目下の悩みは、この後の展開(あくまでも管理人的に)結構ギリギリなんだけど載せていいのそれとも反転する?と言ったところでしょうか。
コメントありがとうございました!

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[2638] 氷の将校と魔性の青年の物語 その5
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リンドウノ 2017/2/19 (Sun.) 16:43:35
(書かれることのなかった勝生上等兵の日記 つづき)
若干性的描写、暴力描写がありますのでご注意下さい。全世界のユーリファンの皆さんスミマセン。BGMは、マカロニウェスタン漫画でも聴いていたこちら。

https://youtu.be/7Jhdq_dJ2tw

++++++++++++



(二日目)

 翌日、ヴィクトルの宿舎を訪れた僕が見たのはテーブルの上に用意された清潔な紅茶のセット一式だった。

「嗜好品はここでも不足しているが、特別だ」

 戸惑っている僕の様子を面白がるようにヴィクトルは美しく笑い、側に控えていた部下に合図した。年若い下士官は終始僕に目をくれることなく準備を整え、敬礼をして去った。

「座りたまえ」

 ドアが閉まるとヴィクトルは優雅に、何処か芝居じみた仕草でもって僕を促した。
 干からびた喉越しをつたう久しぶりの熱い液体はウオッカの香りがした。思わず咳き込みつつ自分の目尻に涙が滲んでいるのを感じた。なんと身体の反応の正直な事か。

「気に入って貰えて良かったよ」

 突如静かに落とされた声は冷え冷えとしており、我に返って目の前の敵国の大尉を見た。先程までの柔らかな雰囲気は跡形もなく去り、冬の湖のような青い瞳が無表情にこちらに向けられている。珍しい家畜でも眺めるような視線だった。隙なく纏った軍服、ぴかぴかに磨き上げられた上等の長靴。昨日の僕が、跪いた姿勢のままで自分の唇を擦り付けた靴。僕は目の前のカップに目をやり、そうかこの茶を飲み終えたら昨日の続きが始まるのだ、と悟った。

 僕はヴィクトルの視線に促されるまま立ち上がった。外套を脱ぎ、上着のボタンを外すと忘れていた冷気に肌が縮んだ。ふと視界の端に、壁際に立てかけられた物が見えた。それは細長く優美で、持ち手は黒光りする皮でしつらえてあった。

 どうしてこんな所に乗馬鞭があるんだ?

「後ろを向け」

 氷のような語尾の後、僕の背に鋭い痛みが振り下ろされた。





(三日目)

 その日は午後の労働が終わった後の呼び出しだった。

 昨日の傷は動くたび布が擦れて痛み、膿と熱を伴って身体を苛んでいた。僕はヴィクトルの前でのろのろと上着を脱ぎ、促されるままペチカの設置してある壁際まで歩いて行った。数ヶ月の苛酷な労働と栄養不足で肋骨は醜く浮き出ている。実際この部屋の主の前では、今の僕など家畜よりも酷い有様だろう。

「まだ脱ぐものがあるだろ?」

 肘掛け椅子に身体を預け、銀髪を掻き上げながら命じたヴィクトルの声は容赦がなかった。

「無理です」震え声を自覚しつつ僕は懇願した。屈辱感と羞恥心で血が逆流するような感覚だった。それ以上にこの男の前で痩せた醜い肉体を晒す絶望だった。

「ああ、俺はそう言うのは大嫌いだ」

 氷の将校は言い放った。最早此の地、此の部屋では僅かな抵抗すら許されない。それでも僕は素裸の上半身を部屋の真ん中で晒したまま惨めな木偶の坊のように立ち竦んでいた。視界が滲み、生暖かい液体が床に落ちるのを感じた。

「よく泣く男だな」 静かな声が背後からかかる。続けろ。


 一体どうして僕らは、こんな所で。

 あのハルビンの日々。最早それを思い出すことすら禍々しかった。

 僕はズボンを床に落とし下着を脱いだ。凍てつく冬の視線を感じつつ、命じられるまま膝を折った。





(五日目)

「お前は、体力だけは底抜けだな」

 僅かに熱を帯びたヴィクトルの声が背後から囁いた。彼の行為は、徐々にタガが外れていっている様だった。僕は膝を折ったまま断続的に襲ってくる苦痛ををやり過ごす。でなければ次の夕刻からの労働を耐え抜けない。数日をかけて刻み込まれた傷からは血の匂いがした。

「俺以外の事を考えるな」

 髪の毛を掴まれ、新たな激痛に視界が歪む。
 ヴィクトルの唇が僕の唇に押し付けられているのだと気付いた時には床の上に引き摺り倒されていた。

 微かにウオッカと、花の香りがした。




 ++++++++++++





 それから後は、今迄の数日間が前戯でしかなかったのだと思い知ることとなった。

 氷の将校の愛玩具。あの数年間の僕は、まさしくそうとしか呼べない存在だった。




 ++++++++++++





 あの頃の事を僕の班の連中が知っていたのかどうかは分からない。
 おそらく彼等は、見て見ぬ振りをしていたのだろう。
 ヴィクトルの部下達は知っていた。行為の最中、ドア越しに何度か軍靴が近づき、遠ざかって行った音を二人共聞いていた筈だ。

 あの記憶は僕の精神の中で澱となってこびり付き、おそらく死ぬまで口にする事はない。

 ただ一度、僕がそれを言葉にしたのはずっと後、ワルシャワのホテルの一室で、ヴィクトルが僕のその場所に触れた時だ。僕の身体中にまだ残っていたその傷痕を。




Re:氷の将校と魔性の青年の物語 その5
みゆ 2017/2/19 (Sun.) 22:23:33
ハラショー!
つ、ついに越えてしまわれましたね、「びーえる」は書かない、という「リンドウノ様倫」を華麗に、思いっ切り。
あ、「描かない」が「リンドウノ様倫」だから「書く」のはオッケーなんでしょうか?
「あのハルビンの日々」が激しく気になりますです、今後、回想で出てきますか?
ユーリ全く知らなくても続きが楽しみです〜!
もちろん、後日のワルシャワもね!

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 その5
リンドウノ 2017/2/21 (Tue.) 00:58:16
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃませ。
実はびーえるを書いたつもりはサラサラなくて、どっちか言うとビーストモード発動(エヴァ)って感じですかね、何がというと、管理人の。とは言えオリジナルでは鬼畜もクズもすらすら描けるけど、ヴィクトルさんクズじゃないから!レジェンドだけどクズじゃないから!と言い訳しつつ書いてたり。
そんなこんなであとちょっと続きますので宜しければお付き合い下さいね。ワルシャワ編かどうかは乞うご期待?
コメントありがとうございました!

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[2640] 氷の将校と魔性の青年の物語 その7
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リンドウノ 2017/2/22 (Wed.) 22:34:08
 勝生勇利からヴィクトル・ニキフォロフに宛てた手紙
(1975 東京)




 ヴィクトル。貴方にもうすぐ会えるという事実に、僕は酷く緊張している。
 緊張し過ぎてきっと上手く喋れないだろうから、今のうちに手紙にしたためておくよ。長い年月をかけても消えることのなかった、貴方に対しての僕の真実だ。

 ヴィクトル、覚えているだろうか。
 僕は貴方によく、お互いの背負っている義務の話をしていた。
 その方が楽だったからだ。
 義務の話をする事で僕と貴方の間に横たわっている、この言葉に出来ない関係から逃げられると思っていたんだ。
 あの凍土での地獄の日々は、僕の中のあらゆるものに蓋をして行く作業の繰り返しだったが、同じように僕は貴方の気持ちについても見て見ぬ振りをしていた。
 貴方の愛を知っているのは僕だけだと傲慢にも近い確信を持ちつつ、素知らぬ顔で他でもない僕と貴方の間にあるものについても蓋をしたのだ。

 ヴィクトル、赦してくれ。
  僕は多分、世界中の誰よりも貴方を偽って来た。





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[2645] 氷の将校と魔性の青年の物語 その8
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リンドウノ 2017/2/25 (Sat.) 18:54:20

 次回、最終話です。辺境で好き勝手書き散らかしてますが、もし最初から読んで下さった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました。ハルビン編書き足したいな。

++++++++++++





 ヴィクトル・ニキフォロフから勝生勇利に宛てた手紙
(1975 某所)


 ユウリ。

 今一度、お前の名を呼ぶことを許して欲しい。

 ワルシャワでお前に再会できる日を待ちわびている。
 ここまで来る為に、一体どれだけの時間が必要だっただろう。お前にどれほどの葛藤があり、俺にどれだけの懺悔が必要だったことか。
 それでも幾つかの偶然と必然と善意によって、俺たちは邂逅する。

 どうか必ず、約束の地に来てくれ。









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[2646] 氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
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リンドウノ 2017/2/25 (Sat.) 19:17:26

(1989 モスクワ)





 西郡優子様

 お元気ですか。長谷津の桜はそろそろ見頃でしょうね。
 僕はと言えば、ヴィクトルが天に召されて後も桜を見ることなく、この地で何度目かの遅い春を迎えています。

 優ちゃん。時々思うんだ。一体僕たちの、この数奇な運命を誰が想像し得ただろうかと。

「もし俺たちに他の人生があっても」

 去り行く前、ヴィクトルは言ったんだ。まるで聖人のように気高く、白く美しい貌を僕に向けて。

「それでもお前は、俺が離れずにお前の側にいる事を許してくれるかい?」


 ああ今、この街を覆う灰色の陰鬱な雲の隙間から僅かに光が射したよ。
 あれは早春の空、彼の、ヴィクトルの瞳の青だ。





++++++++++++






 そうして私は、残されたいくつかの手紙と日記の断片を丁寧に紐で綴じて、手のひらでそっと撫でる。
(TVのニュースは遠い国に永く横たわっていた壁の話題でもちきりだ)

 かつて、北の大地で出会った二つの人生をなぞるように。
 もう戻らない幼馴染の魂が、今もあの地にある事を確認するように。




 氷の将校と魔性の青年の物語  完




++++++++++++


 というわけで、戦前戦中戦後50年に渡る愛の物語、完。此処までお付き合い下さった方がもしいらっしゃいましたら、ありがとうございました。

 、、、お前ら、スケートしろよ。

 ラストシーンをベルリンの壁崩壊にしたのは大体その年の前後にホンモノのリビングレジェンド誕生したよねーというオチ。

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
みゆ 2017/2/25 (Sat.) 21:44:17
おおお…!
戦前戦中戦後の浪漫、ついに完結しましたか…!
どんな具合に終わるんだろう、と思ってましたが、「こう来たか…」と。
やっぱり「薄い本」を出すべきだと真剣に思っちゃうですよ。
現パロは二次創作の花っすけど、ここまでのものは、なかなか…。
マニアックにニーズありそうですけどね?
1989年のモスクワだと、「私が赤の広場に立っていた」2年後ですか…。
大作、お疲れ様でした&御馳走様でした〜!

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
リンドウノ 2017/2/26 (Sun.) 21:00:30
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃいませ。

ユーリ!!!全く関係なく書き散らかした戦前戦中戦後50年にかけての浪漫、読んで頂きありがとうございました!まさか最後まで書く事になるとは思ってなかったのですが、振り返るとシベリア編に対してハルビン編超あっさりですね、なので少しずつ書き足して別場所にアップするつもりです。

そして、おお、ロシアいやソ連邦行かれてましたか、しかも赤の広場。あの頃のソ連旅行するってかなり面倒くさそうな印象なのですが、如何だったのでしょう?かくいう私は壁崩壊の翌年か翌翌年の東ベルリンに行っておりましたねー、そう言えば。東に入った途端に路駐してる車が何十年前のものに変わってて一瞬デロリアンにでも乗ったような錯覚を覚えましたし、漫画や映画でしか知らなかった東側滞在は想像以上にメンタルヤバくて一泊してる最中考えてたことは早く西側に帰りたい、だけでしたけどねー、しみじみ。
コメントありがとうございました!

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
みゆ 2017/2/27 (Mon.) 21:46:50
「あの頃のソ連はどうだったのか」とのご質問に答えて、一発。
「食べるものがチキンとキュウリばっかりでした」、この一語に尽きます。
外国人が泊まれるホテルは「決まっていた」んで、「それなりの食事が出る筈」なのに、判で押したようにチキンとキュウリで、何処へ行ってもチキンとキュウリ。
今から思うと某チェルノブイリの呪いだったかも…。翌年でしたしね!

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
リンドウノ 2017/2/28 (Tue.) 19:25:51
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃいませ。
いやあ、ディープ過ぎるソ連旅行ネタですね、、、ひょっとしてひょっとしなくてもやはりアレですかね、、、いやあ、おそロシア、まじおそロシア。
コメント、ありがとうございました!

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[2648] ハルビン編チラ見せ(ヴィクトルver.)
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リンドウノ 2017/3/2 (Thurs.) 21:53:10
 ヴィクトル・ニキフォロフから同胞ユーリ・プリセツキーに宛てた手紙
(1939 ハルビン)


 故郷レニングラードから遠く離れた地で、俺は俺の唯一の花を見つけたよ。
 彼は、そうだユーリ、お前と同じ名を持っている。


 始まりはハルビン、故郷を思わせる美しい街で開かれた夜会だった。
 馳走にも談笑にも飽きた俺は何だか夜風にあたって孤独になりたくなった。ふらりと足を運んだ二階のバルコニーには残念ながら先客がいた。分厚い丸眼鏡をかけた東洋人。地味な、此れといって特徴のなさそうなその青年を俺が暫く眺めていたのは、野暮ったい背広の下の引き締まった筋肉と背筋の伸びた姿勢で、彼が軍人であることを察したからだ。歳は、幾つだろう?丸眼鏡ごしの瞳が穏やかにこちらを振り返った。彼は居住まいを正すと、この街で知られた貿易商会の名をあげて俺に挨拶した。僕の名前は勝生勇利、貴方のお噂はかねがね伺っています、と言った具合に。

 なるほどね、あの男の差し金か。
 俺はすぐに、最近俺の周辺をやたら彷徨いている貿易商の、のっぺりした顔を思い出したよ。
(ここでは詳細には触れないでおく。近頃起こった国境地帯での出来事に於いて我々と彼等の間に生じている敵対関係、とだけ書いておこう)

 しかし目先の好奇心が警戒心を常に上回るのが俺の悪癖でもあり美徳だ。
 数時間後には俺とその青年は二人して、床の上に空の酒瓶を何本も転がし、へべれけになっていた。その前に彼ーユウリが、すんなりと自分は軍属であり最近この街に赴任して来たばかりなのだと明かしたので少々驚いたが。成る程、確かにこの青年は軍直属の諜報機関の連中とは全く異なる匂いを持っているし、あの貿易商の子飼いという訳でもなさそうだ。但し、まるきり無害な存在と思って油断していると足元を掬われる、といった所だろう。

 俺は知らず知らず、この新たな興味深い対象となった青年を頭から爪先までじっくりと眺めていた。汗をかいたのだろう、度の強い眼鏡を外した下には十代の少年と言っても通りそうな童顔、大きな焦げ茶色の瞳。ふと彼が顔を上げてまるで蕾が綻ぶようにぱっと微笑んだ。小々波のような談笑に交じって聞こえる音楽。

 君は踊れるのかい?
 真夜中を過ぎた邸宅のソファに寝転がった俺がそう問いかけると、絨毯の上でこれまた無防備に座り込み身体にアルコールをたっぷり含んだ彼は、印象的な大きな瞳で俺を見上げて笑ったんだ。ええ、ワルツでもタンゴでもなんだって。上司に知れたら鉄槌ものですね!

 ハルビンの夜、階下の大広間から聴こえるバンドの音楽に合わせて俺達はステップを踏み夜を明かした。

Re:ハルビン編チラ見せ(ヴィクトルver.)
みゆ 2017/3/2 (Thurs.) 22:03:14
来た来た来た…!
これが「男同士の相合傘」ならぬ「男同士のタンゴ」ですね!
いやあ、素敵です、こういうのいいなあ…。
ハルビン編の冒頭も「早々に」読んでいたんですけど、「コメント」コマンドが無かったもので、「コメント禁止だよね…?」と「拝むだけで」終わっておりました。
私が行ったハルビンは20年以上前とはいえ、立派に「中華人民共和国」テイスト、夜会とは無縁な街でした。そういや、真っ昼間とはいえ、町中で大停電が起こって「すっげえ困った」記憶があります。
このお話の時代だと「停電」、普通にありそう…。

Re:ハルビン編チラ見せ(ヴィクトルver.)
リンドウノ 2017/3/4 (Sat.) 14:50:58
みゆ様こんにちは、ようこそいらっしゃいませ!
おおお、やはりハルビン行かれてたのですねー、すっかり今では中華人民共和国テイストになってるらしいハルビンですが、管理人の脳内では業務用上白糖20Kgを足元に置いてこれでもかというくらいに激甘テイストに偽造しています。ハルビン編糖分80パーセント!それほぼ砂糖!な感じで。停電は、ふつーあったでしょうなあ。夜会の時とかにもあったりしたら色々妄想展開出来そう。
コメントありがとうございました。

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