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[2647] ハルビン編 冒頭
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リンドウノ 2017/2/28 (Tue.) 19:21:50

   プロローグ


 美しい街でしょう?此処は。白亜の駅舎、荘厳な寺院、多彩な食文化。まさに極東のパリと謳われるとおりだ。かつてロシアがこの地に鉄道を敷きそれに伴って純然たるロシア式市街地が建設されましたが、今は帝国の進出目覚ましく邦人が年々増加しています。
 君、勝生君?キタイスカヤにはもう行きましたか?是非行ってみるといい、モンマルトル、ピカデリーと比べても遜色ありません。

「いえ、自分は大連の宣伝班からこちらに移動してきたばかりですから」

 彼はそう言い、アールヌーボー調のソファの上で幾分居心地の悪いまま姿勢を正した。
 大通りより東に位置した一角に居を構える貿易商会。白いバルコニー越しに見えるのはキリル文字やローマ字の看板だ。

 一体全体どうして僕は、こんな所に。

「失礼ながら経歴は存じていますよ。君のようなインテリが幹部候補生にすらならず一兵卒に甘んじているとは意外でした」

 目の前の副支配人の、遠慮のない言葉とのっぺりした笑みを受けて、彼は姿勢を正したまま曖昧な笑みを浮かべた。欧州での留学経験もあり英語とロシア語に堪能。加えて端から見れば中央で出世してもおかしくない経歴を持ってはいるが、現実は一兵卒止まりで大陸を転々と移動する数年間だった。それは多分に自分のこの、豆腐並みの精神の薄弱さ故だろう。肝心な所で成果を出せず足元を掬われ或いは自滅して来た。故郷の連中は何も言わないが、きっと内心では失望しているに違いない。

「勝生君。私が見た所、君は自分を過小評価している気もしますがね」
「それは買い被り過ぎでしょう」
「どうかな。君の上司は無能な人間をわざわざこちらに寄こしたりはしませんよ。ご承知だと思うが私どもはこの街で上層部の皆さんの為に様々な便宜をはかっています。加えて前線の、先頃極めて重要となった地域での兵站と輸送を・・ああ、これは蛇足だったな。兎に角、あらゆる局面において牛馬の如く扱き使われている訳ですが、君の上司は何故か私どもの事を軍部の威を借りて物流を独占している狐に例えて警戒している、全く心外ですね」

さもありなん。軍属である彼の上官と民間出身の諜報員であるこの男は味方同士とも言えるが、完全な味方ではない。表面上は手を取り合いつつ隙あらば情報を掠め取る事に抜かりがない。そして上官が一介の下士官である自分を繋ぎとしてここに寄こし目の前の男がそれを了解しているのもお互いがお互いを出し抜こうという魂胆故だ。彼は心の内で溜息をついた。

「ああ、そうそう勝生君」

所用を終えて退出しようとする彼を副支配人は呼び止めた。

「君は、この男を知っていますか」

さり気ない風を装って示された写真を、彼は手に取って眺めた。白い肌、高い鼻筋。瞳の色はおそらく薄い青、骨格は典型的なスラブ民族のそれだ。美しい男だな、と彼は率直な感想を抱いた。何処かの邸宅の夜会なのだろう、仕立ての良い背広を着こなし、しなやかな佇まいで年配の婦人と談笑しているその男は、その整い過ぎる外見故か何処か冷やかにも見えた。

「すこぶるつきの美男子でしょう?この街のご婦人方は皆彼に夢中ですよ。革命後に亡命して来た貴族の末裔らしいが、社交界では彼の事を密かにツァーリ(皇帝)と呼ぶ連中すらいます。そして、ここからは私の個人的なお願いなんですけどね」

のっぺりした顔をさらに引き伸ばしたような笑顔が近づく。嫌な予感しかしない。

「君に、この男と会って頂きたい。お膳立てはこちらが準備万端致します。そうして出来ればこの男と親しくなってですね、どんな些細なことでもいいんだ、彼の事を私に報告して頂きたいのです」
「誰なんです、彼は」

さらりと男は言った。

「スパイですよ、ソ連のスパイ」



++++++++++++


てな感じで始まる氷の将校ヴィクトルと魔性の青年勝生のお話ハルビン編、冒頭でした。お前はハルビン観光大使か、というくらいにはハルビンキラキラ度を上げています、行ったことないけど。
一応ハルビン編(大戦前夜〜終戦)、シベリア編(シベリア抑留〜ベルリンの壁崩壊)の流れです。糖度0.1パーセントだったシベリア編と対照的にハルビン編は激甘糖度80パーセント!あくまでも目標だけどな!
この続きはその内pixivにアップしてもいいじゃろか?と大それた野望を持っていたり。

[返信]

[2646] 氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
[作者検索] *アップロード画像

リンドウノ 2017/2/25 (Sat.) 19:17:26

(1989 モスクワ)





 西郡優子様

 お元気ですか。長谷津の桜はそろそろ見頃でしょうね。
 僕はと言えば、ヴィクトルが天に召されて後も桜を見ることなく、この地で何度目かの遅い春を迎えています。

 優ちゃん。時々思うんだ。一体僕たちの、この数奇な運命を誰が想像し得ただろうかと。

「もし俺たちに他の人生があっても」

 去り行く前、ヴィクトルは言ったんだ。まるで聖人のように気高く、白く美しい貌を僕に向けて。

「それでもお前は、俺が離れずにお前の側にいる事を許してくれるかい?」


 ああ今、この街を覆う灰色の陰鬱な雲の隙間から僅かに光が射したよ。
 あれは早春の空、彼の、ヴィクトルの瞳の青だ。





++++++++++++






 そうして私は、残されたいくつかの手紙と日記の断片を丁寧に紐で綴じて、手のひらでそっと撫でる。
(TVのニュースは遠い国に永く横たわっていた壁の話題でもちきりだ)

 かつて、北の大地で出会った二つの人生をなぞるように。
 もう戻らない幼馴染の魂が、今もあの地にある事を確認するように。




 氷の将校と魔性の青年の物語  完




++++++++++++


 というわけで、戦前戦中戦後50年に渡る愛の物語、完。此処までお付き合い下さった方がもしいらっしゃいましたら、ありがとうございました。

 、、、お前ら、スケートしろよ。

 ラストシーンをベルリンの壁崩壊にしたのは大体その年の前後にホンモノのリビングレジェンド誕生したよねーというオチ。

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
みゆ 2017/2/25 (Sat.) 21:44:17
おおお…!
戦前戦中戦後の浪漫、ついに完結しましたか…!
どんな具合に終わるんだろう、と思ってましたが、「こう来たか…」と。
やっぱり「薄い本」を出すべきだと真剣に思っちゃうですよ。
現パロは二次創作の花っすけど、ここまでのものは、なかなか…。
マニアックにニーズありそうですけどね?
1989年のモスクワだと、「私が赤の広場に立っていた」2年後ですか…。
大作、お疲れ様でした&御馳走様でした〜!

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
リンドウノ 2017/2/26 (Sun.) 21:00:30
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃいませ。

ユーリ!!!全く関係なく書き散らかした戦前戦中戦後50年にかけての浪漫、読んで頂きありがとうございました!まさか最後まで書く事になるとは思ってなかったのですが、振り返るとシベリア編に対してハルビン編超あっさりですね、なので少しずつ書き足して別場所にアップするつもりです。

そして、おお、ロシアいやソ連邦行かれてましたか、しかも赤の広場。あの頃のソ連旅行するってかなり面倒くさそうな印象なのですが、如何だったのでしょう?かくいう私は壁崩壊の翌年か翌翌年の東ベルリンに行っておりましたねー、そう言えば。東に入った途端に路駐してる車が何十年前のものに変わってて一瞬デロリアンにでも乗ったような錯覚を覚えましたし、漫画や映画でしか知らなかった東側滞在は想像以上にメンタルヤバくて一泊してる最中考えてたことは早く西側に帰りたい、だけでしたけどねー、しみじみ。
コメントありがとうございました!

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
みゆ 2017/2/27 (Mon.) 21:46:50
「あの頃のソ連はどうだったのか」とのご質問に答えて、一発。
「食べるものがチキンとキュウリばっかりでした」、この一語に尽きます。
外国人が泊まれるホテルは「決まっていた」んで、「それなりの食事が出る筈」なのに、判で押したようにチキンとキュウリで、何処へ行ってもチキンとキュウリ。
今から思うと某チェルノブイリの呪いだったかも…。翌年でしたしね!

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 最終話
リンドウノ 2017/2/28 (Tue.) 19:25:51
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃいませ。
いやあ、ディープ過ぎるソ連旅行ネタですね、、、ひょっとしてひょっとしなくてもやはりアレですかね、、、いやあ、おそロシア、まじおそロシア。
コメント、ありがとうございました!

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[2645] 氷の将校と魔性の青年の物語 その8
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リンドウノ 2017/2/25 (Sat.) 18:54:20

 次回、最終話です。辺境で好き勝手書き散らかしてますが、もし最初から読んで下さった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました。ハルビン編書き足したいな。

++++++++++++





 ヴィクトル・ニキフォロフから勝生勇利に宛てた手紙
(1975 某所)


 ユウリ。

 今一度、お前の名を呼ぶことを許して欲しい。

 ワルシャワでお前に再会できる日を待ちわびている。
 ここまで来る為に、一体どれだけの時間が必要だっただろう。お前にどれほどの葛藤があり、俺にどれだけの懺悔が必要だったことか。
 それでも幾つかの偶然と必然と善意によって、俺たちは邂逅する。

 どうか必ず、約束の地に来てくれ。









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[2640] 氷の将校と魔性の青年の物語 その7
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リンドウノ 2017/2/22 (Wed.) 22:34:08
 勝生勇利からヴィクトル・ニキフォロフに宛てた手紙
(1975 東京)




 ヴィクトル。貴方にもうすぐ会えるという事実に、僕は酷く緊張している。
 緊張し過ぎてきっと上手く喋れないだろうから、今のうちに手紙にしたためておくよ。長い年月をかけても消えることのなかった、貴方に対しての僕の真実だ。

 ヴィクトル、覚えているだろうか。
 僕は貴方によく、お互いの背負っている義務の話をしていた。
 その方が楽だったからだ。
 義務の話をする事で僕と貴方の間に横たわっている、この言葉に出来ない関係から逃げられると思っていたんだ。
 あの凍土での地獄の日々は、僕の中のあらゆるものに蓋をして行く作業の繰り返しだったが、同じように僕は貴方の気持ちについても見て見ぬ振りをしていた。
 貴方の愛を知っているのは僕だけだと傲慢にも近い確信を持ちつつ、素知らぬ顔で他でもない僕と貴方の間にあるものについても蓋をしたのだ。

 ヴィクトル、赦してくれ。
  僕は多分、世界中の誰よりも貴方を偽って来た。





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[2639] 氷の将校と魔性の青年の物語 その6
[作者検索]
リンドウノ 2017/2/21 (Tue.) 19:26:33

 もう少し続きます。


++++++++++++


 勝生上等兵の日記
(1949 シベリア〜舞鶴)


 その日、僕達は突然の通達を受け収容所を後にした。

 期待と不安がないまぜな顔で囁きあっていた男達はやがて無言となり、なけなしの荷物を抱えて列に並んだ。刺すような秋の空気の中を痩せた俘虜の集団を乗せたトラックは出発した。
 見慣れた白樺林を通り抜けた時、僕は一度だけ振り返った。
 ヴィクトルの宿舎は扉も窓も固く閉ざされ、主人の姿を見る事はなかった。僕は宿舎が遠ざかって行くのを凝視しつつ、昨日の午後の事を思い出していた。

 その時、僕ら二人はベッドの縁に並んで腰掛けていた。俯いたヴィクトルのむき出しの肩の上に窓越しの陽が射し、天使の羽根のような淡い色の産毛が光って見えた。
 やがてヴィクトルは僕に向かって一言二言囁き、僕も返した。会話の内容は覚えていない。長い間、あの部屋を支配していた暴力と狂気と愛撫はとうに日常化しており、僕の身体も精神も何処か麻痺していたのかもしれない。午後の金色の光の射し込む一瞬が、あたかも地獄から隔絶された庭のように輝いていた。

 遠ざかる宿舎は見る間に点となり、視界から完全に消えた。


 暫くして僕達を乗せたトラックは駅に着き、すし詰めになった貨車での長い旅が始まった。到着した港で何日か過ごした後ようやく船に乗せられ、舞鶴に到着した。故郷の長谷津を発った日から5年以上の年月が経過していた。





++++++++++++




 勝生勇利の日記
(1969 長谷津)

 出版社に勤めている子供たちに勧められ、満州とシベリアでの記録を残す事にした。
 妻が他界してからこっち、ぼんやりしている僕を気遣っての事だと分かってはいるが、正直全く気が進まない。
 それは僕の身体と精神のそこら中に残る、未だ生々しい傷痕を確認する作業だからだ。
 それでもこの苦役に等しい行為に耐える理由はひとつしかない。

 ヴィクトル。

 僕は闇の中でもがきつつ手を伸ばす。






[返信]

[2638] 氷の将校と魔性の青年の物語 その5
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リンドウノ 2017/2/19 (Sun.) 16:43:35
(書かれることのなかった勝生上等兵の日記 つづき)
若干性的描写、暴力描写がありますのでご注意下さい。全世界のユーリファンの皆さんスミマセン。BGMは、マカロニウェスタン漫画でも聴いていたこちら。

https://youtu.be/7Jhdq_dJ2tw

++++++++++++



(二日目)

 翌日、ヴィクトルの宿舎を訪れた僕が見たのはテーブルの上に用意された清潔な紅茶のセット一式だった。

「嗜好品はここでも不足しているが、特別だ」

 戸惑っている僕の様子を面白がるようにヴィクトルは美しく笑い、側に控えていた部下に合図した。年若い下士官は終始僕に目をくれることなく準備を整え、敬礼をして去った。

「座りたまえ」

 ドアが閉まるとヴィクトルは優雅に、何処か芝居じみた仕草でもって僕を促した。
 干からびた喉越しをつたう久しぶりの熱い液体はウオッカの香りがした。思わず咳き込みつつ自分の目尻に涙が滲んでいるのを感じた。なんと身体の反応の正直な事か。

「気に入って貰えて良かったよ」

 突如静かに落とされた声は冷え冷えとしており、我に返って目の前の敵国の大尉を見た。先程までの柔らかな雰囲気は跡形もなく去り、冬の湖のような青い瞳が無表情にこちらに向けられている。珍しい家畜でも眺めるような視線だった。隙なく纏った軍服、ぴかぴかに磨き上げられた上等の長靴。昨日の僕が、跪いた姿勢のままで自分の唇を擦り付けた靴。僕は目の前のカップに目をやり、そうかこの茶を飲み終えたら昨日の続きが始まるのだ、と悟った。

 僕はヴィクトルの視線に促されるまま立ち上がった。外套を脱ぎ、上着のボタンを外すと忘れていた冷気に肌が縮んだ。ふと視界の端に、壁際に立てかけられた物が見えた。それは細長く優美で、持ち手は黒光りする皮でしつらえてあった。

 どうしてこんな所に乗馬鞭があるんだ?

「後ろを向け」

 氷のような語尾の後、僕の背に鋭い痛みが振り下ろされた。





(三日目)

 その日は午後の労働が終わった後の呼び出しだった。

 昨日の傷は動くたび布が擦れて痛み、膿と熱を伴って身体を苛んでいた。僕はヴィクトルの前でのろのろと上着を脱ぎ、促されるままペチカの設置してある壁際まで歩いて行った。数ヶ月の苛酷な労働と栄養不足で肋骨は醜く浮き出ている。実際この部屋の主の前では、今の僕など家畜よりも酷い有様だろう。

「まだ脱ぐものがあるだろ?」

 肘掛け椅子に身体を預け、銀髪を掻き上げながら命じたヴィクトルの声は容赦がなかった。

「無理です」震え声を自覚しつつ僕は懇願した。屈辱感と羞恥心で血が逆流するような感覚だった。それ以上にこの男の前で痩せた醜い肉体を晒す絶望だった。

「ああ、俺はそう言うのは大嫌いだ」

 氷の将校は言い放った。最早此の地、此の部屋では僅かな抵抗すら許されない。それでも僕は素裸の上半身を部屋の真ん中で晒したまま惨めな木偶の坊のように立ち竦んでいた。視界が滲み、生暖かい液体が床に落ちるのを感じた。

「よく泣く男だな」 静かな声が背後からかかる。続けろ。


 一体どうして僕らは、こんな所で。

 あのハルビンの日々。最早それを思い出すことすら禍々しかった。

 僕はズボンを床に落とし下着を脱いだ。凍てつく冬の視線を感じつつ、命じられるまま膝を折った。





(五日目)

「お前は、体力だけは底抜けだな」

 僅かに熱を帯びたヴィクトルの声が背後から囁いた。彼の行為は、徐々にタガが外れていっている様だった。僕は膝を折ったまま断続的に襲ってくる苦痛ををやり過ごす。でなければ次の夕刻からの労働を耐え抜けない。数日をかけて刻み込まれた傷からは血の匂いがした。

「俺以外の事を考えるな」

 髪の毛を掴まれ、新たな激痛に視界が歪む。
 ヴィクトルの唇が僕の唇に押し付けられているのだと気付いた時には床の上に引き摺り倒されていた。

 微かにウオッカと、花の香りがした。




 ++++++++++++





 それから後は、今迄の数日間が前戯でしかなかったのだと思い知ることとなった。

 氷の将校の愛玩具。あの数年間の僕は、まさしくそうとしか呼べない存在だった。




 ++++++++++++





 あの頃の事を僕の班の連中が知っていたのかどうかは分からない。
 おそらく彼等は、見て見ぬ振りをしていたのだろう。
 ヴィクトルの部下達は知っていた。行為の最中、ドア越しに何度か軍靴が近づき、遠ざかって行った音を二人共聞いていた筈だ。

 あの記憶は僕の精神の中で澱となってこびり付き、おそらく死ぬまで口にする事はない。

 ただ一度、僕がそれを言葉にしたのはずっと後、ワルシャワのホテルの一室で、ヴィクトルが僕のその場所に触れた時だ。僕の身体中にまだ残っていたその傷痕を。




Re:氷の将校と魔性の青年の物語 その5
みゆ 2017/2/19 (Sun.) 22:23:33
ハラショー!
つ、ついに越えてしまわれましたね、「びーえる」は書かない、という「リンドウノ様倫」を華麗に、思いっ切り。
あ、「描かない」が「リンドウノ様倫」だから「書く」のはオッケーなんでしょうか?
「あのハルビンの日々」が激しく気になりますです、今後、回想で出てきますか?
ユーリ全く知らなくても続きが楽しみです〜!
もちろん、後日のワルシャワもね!

Re:氷の将校と魔性の青年の物語 その5
リンドウノ 2017/2/21 (Tue.) 00:58:16
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃませ。
実はびーえるを書いたつもりはサラサラなくて、どっちか言うとビーストモード発動(エヴァ)って感じですかね、何がというと、管理人の。とは言えオリジナルでは鬼畜もクズもすらすら描けるけど、ヴィクトルさんクズじゃないから!レジェンドだけどクズじゃないから!と言い訳しつつ書いてたり。
そんなこんなであとちょっと続きますので宜しければお付き合い下さいね。ワルシャワ編かどうかは乞うご期待?
コメントありがとうございました!

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[2637] 氷の将校と魔性の青年の物語 その4
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リンドウノ 2017/2/18 (Sat.) 00:22:37
書かれることのなかった勝生上等兵の日記

(1946 シベリア)







銃声が聞こえた。数秒後の木霊と、静寂。



「彼らの処刑は俺が命じた」

こともなげにヴィクトルは言い、椅子から無造作に投げ出した長い足を組み替えた。

硬質かつ壮麗な敵国の軍服を隙なく纏った彼に対して、俘虜であるこの僕の身なりはきっと酷い有様だろうな、ふとそんな取るに足らない感情が浮かび、直ぐに消えた。

僕は彼の、変わらぬ端正な貌を凝視していた。彼が属する冷たく残酷な世界を体現しているかのようなその横顔を。

しかしそれは僕とて同様なのだ。此処に連れて来られるまでに幾度となく経験した地獄、既に僕の足元も泥と血に塗れていた。



ーーシカタノナイコトダ。





「大尉」僕は震え声で言った。唇はあちこちがひび割れ、血の味がした。

「食料を。このままでは僕達の班は一週間ももたない」

「興味ないな」彼は酷薄に言い放った。

「お願いだ」





(・・・あの、お綺麗なロシア野郎に気に入られりゃあ俺たちも少しはいい思いが出来るし、上手く行けば国に帰れるってもんだ)

1時間前、そう囁いてきた叩き上げの上官の下卑た声が言葉が頭をよぎる。唾を飲み込もうとしたが既に口の中には一滴の水分も残ってはいなかった。干上がった自分の口から出て来る言葉は、他人事のように聞こえた。







「何でもします。貴方が僕に望む事を、何でも」









恐ろしい沈黙の後、こちらを一瞥することもなく彼は呟いた。

「ああ、お前は本当に、何処までも傲慢な男だな」

何故かその声は酷くかすれ、傷付き震えているようにも聞こえた。
白くしなやかな肉食獣のごとき身体が椅子から立ち上がり、僕の方に歩む気配がした。


「キスを」ヴィクトルは言った。

「先ずはそこからだ」



足元に広がる闇を眺めつつ、僕は跪いた。
遠くからまた銃声が聞こえ、そして静寂がおりた。






Re:氷の将校と魔性男の物語り。
みゆ 2017/2/18 (Sat.) 21:38:41
おおお、盛り上がって参りました…!
「かつてない境地」に踏み込んでいらっしゃいませんかね、このお話は。
INNOCENTは脇が「ゲイだのバイだの」だらけでしたけど、今回は「直球ド真ん中」では…?
続き、楽しみにしております。…ユーリ観てないけど、充分に面白い…!

Re:氷の将校と魔性男の物語り。
リンドウノ 2017/2/18 (Sat.) 22:20:58
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃませ。
いやもうホント、横道それまくった結果ユーリ全く関係なくなっててスミマセン!としか。

その点ではINNOCENTのスピンオフ?として描き始めたマカロニウェスタンが横道それまくった挙句本道っぽくなったり、後日譚の小説がゲイだのバイだので埋め尽くされた展開に似てますね、、、遠い目。

そんなこんなで、個人的にはガチモードに入った氷の将校と魔性男の話、目下の悩みは、この後の展開(あくまでも管理人的に)結構ギリギリなんだけど載せていいのそれとも反転する?と言ったところでしょうか。
コメントありがとうございました!

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[2636] 雪の断章。
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リンドウノ 2017/2/16 (Thurs.) 00:14:50
、、という斉藤由貴主演の映画がありましたなあ、観たことないけど。
下のイラストの全体像。思ったよりヴィクトルさんがサディストっぽくはならず、魔性もエロくないです、これでいいのだ。
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[2635] 氷の将校と魔性の青年の物語 その3
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リンドウノ 2017/2/14 (Tue.) 23:41:04
故郷、長谷津で結婚した勝生上等兵ですがその後戦局は悪化。彼は身重の妻を残して再び大陸へ、今度は最前線へと送られます。そしてソ連参戦、、終戦。敗走が始まります。





(1946 シベリア)

「氷の将校と畏れを込めて呼ばれるその男を、僕は知っていた。
かつてあの美しい街で花と謳われた男を。
彼は僕を見た。僕は彼を見た。凍てつく湖の底の光のような美しい青、僅かな憐憫すら残さない瞳を。
地獄はその地にあった。」



「彼処で俺が何を行ったかについては、語る価値すらない事だ」





Re:氷の将校と魔性男。
みゆ 2017/2/15 (Wed.) 21:52:14
うわー、まさかのシベリア抑留っすか!
1946年ならそうですよねえ…。
薄い本が出ないだなんて…。出ないだなんて、あんまりですってば…!
いや、ユーリ観てないからデカイ声では叫べないのが辛いっす。
凄く美味しそうな題材なのに…!

Re:氷の将校と魔性男。
リンドウノ 2017/2/16 (Thurs.) 00:21:42
みゆ様こんばんは、ようこそいらっしゃいませ。
ハイ、まさかのシベリア抑留編です。帝国陸軍上等兵とソ連軍将校の50年に渡るすったもんだ、、な設定の時点で必然的にこうなりました、各方面にはスミマセンとしか。
流石に薄い本は出ませんがpixivに纏めてアップしようかしらん、とも考えてはいますが、字書きではないのでチャレンジャー過ぎますね。
コメントありがとうございました。

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[2632] レジェンドれんしゅう。
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リンドウノ 2017/2/13 (Mon.) 23:33:57
今さらですが、レジェンド描く時にほぼ本家絵見ずに適当に描いてたのでココに来て資料見つつお絵描き、、が!どこをどうやっても自分絵にしかならない、そして美形って何ですか世界一モテる男ってどういう意味ですか。
レジェンドが長い髪をバサッと切った時はさぞかし女性ファンが悲鳴をあげたんでしょうな、管理人も割と(描きやすいので)長髪好きですが、レジェンドに関しては後ろを短く刈った髪型かっこいいーとか思ってます。
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